霧の読書マイル

ここでは、日記の方に書き散らかしていた読書感想文を集めて載せています。

2005
ひまわりの祝祭/藤原伊織
スカーレットウィザード(1〜5)/茅田砂胡
一瞬の光/白石一文
僕の中の壊れてない部分/白石一文
てのひらの闇/藤原伊織
プラナリア/山本文緒
GO/金城一紀
疾走/重松清
代筆屋/辻仁成
春、バーニーズで/吉田修一
恋愛中毒/山本文緒
あなたには帰る家がある/山本文緒
眠れるラプンツェル/山本文緒
チェリーブラッサム/山本文緒
マークスの山/高村薫
長崎乱楽坂/吉田修一
火車/宮部みゆき
柔らかな頬/桐野夏生
終戦のローレライ/福井晴敏
ルードの恩讐/栗本薫
ランドマーク/吉田修一
カエサルを撃て/佐藤賢一
屍鬼/小野不由美
七月二十四日通り/吉田修一

2004
魔性の子/小野不由美
十二国記/小野不由美
天使の卵/村山由佳
最後の息子/吉田修一
ホテルアイリス/小川洋子
デルフィニア戦記/茅田砂胡
すべての雲は銀の.../村山由佳
二人のガスコン/ 佐藤賢一
豹頭王の行方/栗本薫
スポーツは良い子を育てるか/永井洋一




プラナリア/山本文緒
登場する主人公を好きな順番に並べるとこんな感じだろうか。

1位 イズミン
2位 すみ江
3位 カトリーナ
4位 美都
5位 ルンちゃん

やーもうイズミン好きだなー俺。
ただ、これはもう、この主人公たちの心の動きが覗けた上での話でね。
表層的なとこでいけばすみ江かもしれんなー
でも俺はすみ江には気に入ってもらえないなー
困ったなー

なんつうか、俺、女じゃないけど多分これすげえリアルだというのが良く分かります。
(リアルかどうかというのは僕にとっての大きな判断基準の一つです)

最近、文庫になったみたいなので未読の方、是非読んで並べてみてください。
ま、ルンちゃんがダントツのワーストになることは間違いないでしょう。



GO/金城一紀
なんか直木賞づいてますが、たまたまです。
残念ながら、実態は知らないです。
この本がどこまで実情を描いているのかも不明ですが、恐らく、遠からず、というところでしょう。

エンディングは気に入りません。
一件落着、と思ってしまう人、いると思いますよ?
これで賞取ったらダメっすよ。

全然落着してないから。
靖国参拝なんかに噛み付く前に、朝日とか民主党はこの辺の事情からするべき政策をきちんと積み上げたらどうだろうね。

無理だろうね。きっと。
見て見ぬフリをするんだろうね。きっと。

そこできちんと考えてくれるならあんたたちに一票入れてやるよ。

疾走/重松清
やりきれない。もう。この作品。
主人公としては、作品に切り取られた期間の中で、彼の中で開けた(突き抜けた)部分てのがあると思うんですよ。
個から突き抜けて全に触れた、あるいは辿り着いた、と言い換えても良いでしょうか(注1)。
しかしね..
最後まで社会とは切り離されたままだったように僕には思えます。
あまりにも悲しい物語。
ただね、僕もこれが日本の公の現実だってことをものすごい理解していると思ってます。つまり、この作品がフィクションであってフィクションでないということ。
あまりにリアルだと実感できます。

地方が持つ保守的、排他的な部分
あるいは宗教や伝承が転じて持つに至った誤った言い伝えのようなもの
人ってそういったものを結構、捨てられないんですよ。
僕にもきっとあります。

だけど、いつも考えて、考えて、それが個と公の両方にとって正しいのか
いつも考えてます


(注1)
自分(自分の内側、個)とそれ以外(外の世界、他人とか社会とか公とか)というのを表現したいときにフクマがよく使う単語。
二元論的に見たときの個と全。


代筆屋/辻仁成
僕が年賀状をやめてフォトショップで年賀画像を作り出したのは、2000年でした。
2001年2002年も同じ形式で頑張りました。 でも頓挫しました。
結局プリンターで印刷するんだったらメールでも一緒だろ
どうせどっかで買ってきたフリー画像と、明朝体でできた年賀状なんか
俺なんか自分で画像作ってるだけ、むしろ年賀状よりえらいんじゃねえか
大体一つの年賀画像作るのにどれだけ時間かけてると思ってんだ

なーんていう自負というか、それでOKと思ってた節があります。
それってそもそもが間違ってるんですよね。

年賀状とか、お歳暮とか、そういう義務的習慣。
「義務的」ってところが、もう、間違いなんですよ。
義務的にやるんだったら、もうやらない方がマシ。

そういうことがよく分かる本でしたね。
気持ちを伝えたいなら、直筆。


春、バーニーズで/吉田修一
あのー、これ、ランドマークを読んだ後で良かったですよ。
僕の場合、ですが。
何でこういうことすんの?このおっさんは?
この、最終章。
これ、もう思いっきりランドマークですよね。
(ランドマークについては2005/03/20の日記をご覧ください)
順序でいけばたぶん本作が先でしょうから、この最終章ができたからランドマークができたということでしょう。きっと。

最初、僕は本作はグリム童話系を目指してるんだと思ってました。
作品中に出てくる

「昔話って、出てくる言葉が全部、悲しくない?」

という、これです。
でも何か章ごとに性格が違うようにも思いました。
特に最終章。
異質です。

いや、悲しいに、怖いも含めればグリム童話系ってことで間違ってないような気もするな..

本作は、まあ、転換期ってことでいいんでしょうかね。
(だとしたらランドマークの次の作品が恐ろしい..)

恋愛中毒/山本文緒
この本のせいで僕のお祭りが始まったのですね。
あの、ものすごい身近にある狂気、というのですかね。
そういう観点では桐野夏生さんの「柔らかな頬」と似ている気がします。

きっと君は泣く/山本文緒
下の「あなたには〜」の裏表紙に「結婚の意味を問う問題小説」なんて書かれてるんですが、どっちかっていうとこっちの方が結婚の意味を問うてる問題小説だと思います。
内容としてはハッピーマニアに通じるものがあります。
人間って、大嫌いなものって実は一周まわって好きなのかも(羨ましいのかも)しれないっすね。
食べ物は、まあ当てはまらないとしても、生き方とか、嗜好とか、そういうの。

全然本の内容と関係ないですけど戦争だって実は好きなんでしょ。
だからなくならないんでしょ。

あなたには帰る家がある/山本文緒
じゃあこっちは結婚の意味を問うていないかというと、そうですねえ。
これは結婚の意味というよりも、如何に人間は普遍的なもの(含む結婚)と折り合いをつけるのかという、結婚よりももういっこ外の枠で、二つの家族が描かれておるのではないかと。
まあ上述の身近にある狂気は、相変わらず散りばめられているのですがね。
この狂気が他人事じゃないレベルだから、この人の書くものの内容もリアルですねえ。
僕はやっぱり、「僕のイメージしている世界(※)により近い心象、あるいは事象=リアル」と認識していますから、その意味でリアル、です。

※二元論的に「自分(内)とそれ以外(外)」に分けたときの、後者。

眠れるラプンツェル/山本文緒
これはね..完全女性視点の一作。
だからかなあ、生理的にダメです。思考パターンみたなところが。
筆者の力量のせいで僕はもうこの主人公が嫌いでしょうがないっす。
こういう女は生理的にダメっす。
作品としては悪くないんですがね..。
この主人公の住んでいるマンションの隣に、上の作品の佐藤さんが住んでるんですよね。
ものすごい偶然で、連続して読んでしまいました。

チェリーブラッサム/山本文緒
これは読まなくて良かった..失敗..
若年齢(弱年齢?)層向けに書かれた探偵小説もどき。
裏表紙に「ルーツともいえる傑作長編」などと書かれていたので入手したのですが、こういうものを信じてる自分が阿呆でしたね。まあこの本を傑作長編と書いてしまう人間もどうかと思いますけどね。
そこは価値観の問題ですからね。
帯に宣伝などは端から信用してませんが、ただ、こういう表紙に直書きされてる宣伝ですら信じられなくなりました。僕。

マークスの山/高村薫
今更、何言ってんだおまえ、と言わないでください。
確かにこの作品はかなり昔に出版されて、そして色々と賞をとったりしてますよ。
でも面白いか面白くないかは俺様が決めるわけですよ!お客さん!

自分がどんなノリなのか、今よく分からないで書いてますけども。
(多分サンボマスター)
賞をとるだけはある、と書けばよいのか、僕が傑作と思った作品が、賞をとっていてくれて嬉しい、と書けば良いのか。

高村作品はこれまでに「李歐」「黄金の抱いて飛べ」とあと一作くらい読んでましたが、本作はぶっとびました。
これは、凄い。
桁違いです。

凄い

というのは形容詞の形容詞ですから、凄い軽い、とか凄い面白い、とかいう使われ方が正しいとは思うのですが、この作品は、あえて「凄い」と言わせていただきたい。
ミステリー小説だと思っている方は考えを改めていただきたい。
この圧倒的な力量!
僕がこれまで読んだ高村作品とは一線を画しております。

あと、これは個人的な話ではありますが、ボクはこの舞台である広河原、奈良田に何度か訪れているのですよね。
それを思い出して作品に親近感を感じたり、懐かしく思ったりもしておりました。
当時の日記をちょっと抜粋してみましょう。

----抜粋部分----
さて、そのトイレを後にした僕達は南アルプスへと旅立った。

ちょっと前に「ガキの使いやあらへんで!」という番組の罰ゲームで、浜ちゃんがフランスにエビアンを汲みに行かされていたのをご存知だろうか。
南アルプスに向かった理由のひとつには、
「南アルプス天然水」を飲んで同じ味がするか確かめよう!
というのがあったのである。今思うと我ながらバカバカしい。

南アルプス街道を順調に北行していた我々であったが、なかなか我々を喜ばせるような野生の風景になっていかないことを危惧していた。
その矢先、吊り橋フェチの我々を喜ばせる一品が姿を現した。

「この、なんちゅうか安全を保障されてない揺れがいいよな〜」
「いやこれ、マジでやばいって!」

というわけで徐々に人跡未踏具合が増していきイキイキしてきた我々であったが、残念なことに豪雨による土砂崩れで目的地まで辿り着けないことが発覚し意気消沈してしまった。
この南アルプス街道の終点は「広河原」という地であったのだが、我々が行きつける最終地点は「奈良田」という場所までであった。
興味のある方はちょっと地図で確認してもらいたい。
なんとも悔しい思いをしつつも今更ルート変更するわけにもいかず、この奈良田をキャンプ地とすることにした。
この奈良田で我々はこの後、かなり笑える事態に遭遇することになる。
----抜粋終わり----

この1年後、僕たちは無事、リベンジをおこない、広河原に到達することができているのです。
(実は冬季閉鎖と土砂崩れで、2度リベンジして3度目でやっと広河原に到達できた)

登場人物である刑事、合田雄一郎が登場する高村作品が数冊あるようですので、引き続きそれらを読まなければ収まりません。
何が収まらないかは、よく分かりません。

長崎乱楽坂/吉田修一
吉田修一の荒々しい方の部分がふんだんに出ている作品。
彼は男の視点と女の視点の両方を持ってるんじゃないかと思いますね。
どちらの性が主人公であるかによってその作品の性質が大きく変わります。
この作品はもう野郎だらけなわけですよ。
何せヤクザの話ですからね。

僕は親の転勤で大きな引越しを一度経験しているからか、住んでいる土地に対する執着というのが殆どないので、いろいろ不思議に思うことは世の中の人たちに対してたくさんあります。
それがいいことなのか悪いことなのか、それはわかりません。


火車/宮部みゆき
僕にとって初めての宮部作品になります。
今ごろ宮部みゆきが初めてってそれ..みたいなとこありますけど。
まあいいじゃないですか。ねえ。
今更、火車の書評みたいなもん書いたって..という気はしますけど、まあ思ったことは書いておいた方が後々楽しいですからね。自分が。

この作品に関して言えば、読んでて楽だった。
というのが一番の感想でしょうかね。
勝手に連れて行ってくれるという。
まあ言ってしまえばエンターテインメント、娯楽作品の部類ですよね。
だから何?っていうのは読んでてないです。
流れ的にも、終わらせ方もなんていうかすごい気持ちいい感じ。
面白いのか面白くないのか!?と言われればそりゃあ断然面白いですよ。
こういうの好きな人は「海と毒薬」とか後述の「ランドマーク」とか絶対読めないだろうなあと思います。


柔らかな頬/桐野夏生
僕にとって始めての桐野作品になります。
またかよ。
何ていうか、この程度の狂気って自分の周りのそこかしこに普通にありそうで、すごい怖いです。
「ありそう」っていうのは、実際は恐らくは「ある」んですよね。きっと。
そういう意味でこの内容はすごいリアルなんだと、自分の中では思ってます。
結局怖いのは人間だよなあと感じる観点では柳美里と近しいものがあるかもしれません。


終戦のローレライ/福井晴敏
これは今、映画化されるってことでえらく話題になってます(ま、話題になるように宣伝しているだけです)が、実際、折笠上等工作兵(17歳)役がツマブキくんってどうよ!?
と思いますね。
この話のメインは恋愛じゃないっしょ!?
そこらへんの恋愛ドラマの主人公でもやらせとけばいいんですよ。彼には。
彼を使っちゃうとそっちがメインととられても仕方ないですよ?
いいんですか?興行収入さえ良ければそれでいいんですか?福井さん?
あなたが伝えようとしてきた大事な部分が、「川の深さは」「亡国のイージス」とかずっとやってきて、単なる恋愛話書いてるおっさんと思われて終わるんですよ?

ついでに艦長が役所広司ってのもイマイチだし..
(でもピエール瀧の田口徳太郎役はちょっと見てみたい..)

そもそもの小説自体が、どうも映画化を意識して書かれてるからか、今までの作品以下という印象を拭えないですね。
熱いという意味では「川の深さは」あたりから通低音としてありますけど、そういう、映画化を見越して書くっていうような、政治的というか商業的なのは、冷めちゃうんだよなあ俺..

まあそういうわけで純粋な福井晴敏が読みたい人は「亡国のイージス」でOKです。
これは読まなくていいです。


ルードの恩讐/栗本薫
ただいま99巻。

ランドマーク/吉田修一
これは問題作ですね。
もう。
今までの吉田作品で一番。
ていうか難解。
いや、自分の中で、世の中のリアルを一番表現できているという、その部分についてはこの作品についても疑いはないです。
さすが吉田、といえます。
しかしなあ..
書きたいことあり過ぎて困ってんじゃないのかこのおっさんは。

自分の中で、どうやって落とし所を見つけたら良いのか、いまだに分かりません。
最初、装丁を見たときに、これはヤバい本だというのは直感しましたけど、まさかこういう方向だったとは。
すぐに面白いだとか面白くないといった結論の出せない本。

カエサルを撃て/佐藤賢一
これは面白くなるまで時間がかかりました。
= 読み終わるまでに時間がかかりました。

三分の二あたりまでは遅々として進みませんでしたが、「今週のごっつええ詩」に採用させていただいたくだりに辿り着いたところから、物語は恐ろしいスピードで進んでいきました。
= 何駅にいるか分からなくらい集中して読み耽りました。

二人のガスコンでもそうでしたが、男の弱さ、それを本人が克服するところの描写がすばらしい。
しかも今回はそれがユリウス・カエサルですからね。
男の子なら間違いなく熱くなるでしょう。
三分の二まではガリア王、ヴェルチンゲトリクスが主役ですが、ここからはユリウスが主役を乗っ取る感じです。

男の弱さ関連で思い出しましたが、映画アイデン&ティティも良かったっすね。
主人公役は現、銀杏BOYZの峯田くん。
すぐに流されてしまいそうになるけれど、意見を絶対まげない主人公を演じます。
こちらも映画の中の台詞を「今週のごっつええ詩」で採用しちゃいました。
まだ見てない方は先に映画をどうぞ。

次の佐藤作品は「ジャガーになった男」の予定。


屍鬼(全五巻)/小野不由美
彼女の著作は基本的にのめりこむまでに時間がかかるんですよね..
十二国記のときも最初の巻はまるまる一冊分、「超ローテンション陽子(←主人公)」に付き合わされてこっちまでローになる始末..
しかしそれを抜けると怒涛のようにハマってしまうという性質をもってますね。
本作も最初の巻の三分の二くらいまでは読むのがつらいレベルで。
なかなか進みませんでした。
二巻あたりでもうエンジン全開です。
しかし、三巻の途中あたりから、「おや?」と思い始めました。
これ、ホラー小説か?と。

(ネタがばれている可能性がありますのでこれから読み始める方、ご注意ください)

小野不由美の屍鬼、といえば、世間的に言えば彼女の旦那の作品と並んでホラー小説の棚に陳列されたりしています。
しかし、本作に出てくる屍鬼。
こんなにリアルに実体をもって登場させられてしまうと、怖くも何ともないですよ。
一周まわって、結局怖いのは人間じゃないか、というところに行き着いてしまってます。

巻末の宮部みゆきさんの解説が、違った切り口でこの作品を評していますが、僕に言わせれば、これは、よしりんの戦争論と大差ないです。
イデオロギーの異なる善と善が対峙したときに日本人である我々はどうすべきか、と問い掛けている。
欧米の一神教が持つ秩序という枠の中で、悪のレッテルを張られた事象は、果たして我々日本人の中でも悪なのか?
人間同士の戦争の、一方は善で一方は悪なのか?

つまりこれは、ホラー小説ではないです。
が、一読の価値ありです。
あなたがどういう感想を持つか、ぜひ聞かせていただきたい。

七月二十四日通り/吉田修一
これは新刊なので通勤途中で読んでないんですが、一応。
やっぱり僕の中で吉田修一は、ベストです。
清濁併せ呑む、というか、そのいずれもを包含しているということにおいて彼の作品のバランスたるや、他を寄付けないですね。
それは、リアルと言い換えてもいいでしょう。
僕が世の中に対して持っているリアルと、彼が表現するリアルは、まさに、リンクしています。

本の帯にね、
「東京湾景」の著者が送る、最新長編ラブストーリー!
って書いてあるんですよ。
バカか、この帯作った奴。
吉田修一をバカにすんな、コラ。

魔性の子/小野不由美
新潮文庫から出てますが、これは十二国記シリーズの外伝と思って読んだほうが面白いでしょう。
すなわち、これだけ読んでも意味はよく分からないのでは?と思われます。
かといって十二国記シリーズを読む前に読んだとしても多分、十分面白いのではないか、とも思われます。

十二国記という作品については、アニメ化されているくらいですから、マーケットとして出来上がっているくらいの著名度が既にあります。
まあそうしたらそうしたでたーくさんの弊害が出てきます。
WEBなんかで検索したくなったりしますが、公式サイトを含めて大したサイトは一つもない(独断)ので、あの未完成のジグソーパズルの欠片をWEB上に探そうと思っても徒労に終わります。
要するに作家以外の誰もが、ジグソーパズルを埋められないのですから。

ただ、作品に出てくる膨大な情報「のみ」を簡潔にまとめているサイトもあって、そういう意味ではここなんかは素敵です。

半パン・デイズ/重松清
俺って小学生の頃こんな感受性豊かだったっけなあ..?
と思わせる一品。
妹尾河童を彷彿とさせる雰囲気がある。あれは確か少年Hだったか。
小学生の主人公が1年生から6年生になるまでに起こった出来事で物語が構成される。
時代背景は70年代?くらいと思われるが、時代を超えて人間社会の中にある普遍的なものを浮き彫りにする。
これは大人の絵本的作品なのだが、読ませたい奴らは絶対読まない。
大体、読ませたい奴らは小説自体を読まない。
といってドラマ化アニメ化すると伝わらない、または曲解されて伝わる。

そこんとこがいつも歯がゆいんだよなあ。
オススメの一冊。

天使の梯子/村山由佳
これ、新刊なんで家で読んだんですけどね。とりあえず「天使の卵」の続編ってことで。
まあ、やっぱり僕は前作の「すべての雲は銀の..」の好きっすねえ。

何つうか、誰かを好きになった時の誇らしさとか、情けなさとか、嫉妬とか、格好悪さとか、そういうのって追体験するもんじゃないっすよね。
自分で知ってれば、分かってれば、良いんじゃないですかね。
本の中で疑似体験するという意味では、非常に機微があっていいんじゃないでしょうか。
単なるバカハッピーエンディングでないところは、まあ、アリですけど。
特にオススメはしません。
悲しいくらいの恋愛追体験好きの方はどうぞ。


「月の影 影の海(上・下)」/小野不由美
「風の海 迷宮の岸」/小野不由美
「東の海神 西の滄海」/小野不由美
「図南の翼」/小野不由美
「風の万里 黎明の空(上・下)」/小野不由美
「黄昏の岸 暁の天」/小野不由美
「華胥の幽夢」/小野不由美
全て「十二国記」が描かれた作品です。
その十二国の存在する世界をかいつまんで書いてしまうと、もの凄く陳腐になってしまうので書けません。
とりあえず一番最初の「月の影 影の海(上)」がどうにも主人公が超ローテンションなので読みづらいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これを超えたらあとはもう。
そりゃあもう。
特に何度読み返してもゾクゾクするのは、「風の海 迷宮の岸」にて泰麒が饕餮を折伏するくだり。
(日本語訳:タイキという主人公の一人が、トウテツという妖魔を子分にするくだり。)
デルフィニアと比較すると、作品全体を通して、暗いです。暗いというよりはシリアスとでも言うのでしょうか。
いずれの作品も人間の浅ましさや愚かさを知ってる作家が書いているという意味で秀逸と言えます。

「天使の卵」/村山由佳
たまたま、最近出版された「天使の梯子」を購入したんですが、それ以前に買いだめしておいた本の続きだったということで、先に卵の方を読みました。
既に村山節が見参ですが、まあ、なんつうか、「すべての雲は銀の..」のが全然良かったっすね。
これから梯子の方も読みますが、さてどうでしょう(茂雄)。

「最後の息子」吉田修一
氏の初期作品。今や無条件で彼のファンです。中篇が三部入ってます。

「池袋ウエストゲートパーク」石田衣良
よくコレで賞とれたなあ、という感じです。面白いは面白いですが、良さがよく分かりません。
リアルがあるような、ないような。
つまり、僕が現実世界(あるいは作者が構築した作品世界)に対して感じている、それ、があるんだかないんだかよく分かりません。
まあそれがあるかないかで、作品を評価してます。僕は。多分。
彼の作品を今後読むかどうか微妙な線上です。

「ホテルアイリス」小川洋子
エロ小説。でも単なるエロ小説かというとそうでもない。上述のリアルがあります。
あと、時代を超えられるように内容が吟味されてるところは、ポリシーを感じますね。
でも一応「博士の愛した数式」を読んでから彼女の評価をしたいなあと思ってます。
文庫になるのは結構先かな..

「デルフィニア戦記」茅田砂胡
剣と魔法の世界、あるいは貴種流離譚を描いた作品を総称してファンタシーと、そう呼んで差し支えないだろう。
ファンタジー、と言わないのは、荒俣宏さんが何かしらの解説で力説していたから、使ってあげることにした。

で、デルフィニア戦記である。
1巻だけ、ずーっと昔に買ってたんだが読んでなかった。
どうせ大したことねんだろ?という、また読まず嫌いだ。
グインサーガも読んでるし、今また銀河英雄伝説を読み直してるし(4回目)、ベルセルクも依然として面白いし。
そういやアルスラーン戦記ってどうなったんだっけ?
ああ、そういやドラゴンランス戦記も読んだっけな。
まあ、それらに匹敵するファンタシーなんてそうそうないだろ?というそれだ。

最近は何を評価するにもまずは試してから、という風にしてはいるんだが。
まだまだ足りないってことだ。

読もうと思えたのが、解説が北上次郎氏だったからだ。
昔は単なる釜炊きメグロだったのに、気づいたら素直に信用できる批評書いてるもんなあ。
やっぱ椎名一族は元奴隷でもすごいなあ。

てことでデルフィニア戦記である。
作者は茅田砂胡氏。
ということで、目下ハマっております。現在第一部(全四巻)を読了。
ちなみにワタクシ、第三巻で泣いております。
読書マイルは、通勤電車内での読書ですので、人前です。
京王線の快速電車の中で、泣いております。感動で。

スナコめ..
恥ずかしい思いさせやがって..

まあ、有体に言ってしまえば、よくある貴種流離譚ですよ。
それをいかに面白く書くか、いかにキャラクターを際立たせるかという、作者の技量ですね。
出来上がったキャラクター同士の掛け合いなんてのは銀河英雄伝説を彷彿とさせます。
イヴンとバルロなんてシェーンコップとポプランみたいな感じですね。
激動の時代を描きつつも、能天気とも言える内容。全体を通して明るいです。

「すべての雲は銀の...(上)(下)」 村山由佳
これはね、一言で言うなら、優しい本です。
とは言え内容としては、痛い内容が続きます。
主人公が長野に赴き滞在する理由然り、主人公が長野で出会う人々の境遇や抱えている問題然り。
しかし、それら現在の日本や、そこに住む人々が抱えている問題たちを俯瞰的に眺めて包み込んでいるような、作者の目線が、とても優しい。
別に、それらの問題を作者として第三者的に許すとか、慰めるとか、そういう意味ではありません。
作者は、立場としては非常に冷徹で残酷です。
でも、優しいんですよね。間違いなく。


「二人のガスコン(上)(中)(下)」 佐藤賢一
以前に、ケチって文庫化を待ったことまでは書いたでしょうか。文庫で買っても2000円くらいかかります。
だが..これはおもろい!
男の子なら間違いなくハマりますね。
ハマるという意味では、本作だけでなくて「双頭の鷲」だって「王妃の離婚」だって「傭兵ピエール」だってハマります。
ただ、今回のは、ハマり方がちょっと違う。

題名のガスコンですが、ガスコーニュ人のことをガスコンと呼ぶそうです。
つまり、二人のガスコーニュ人の、お互いに対する反発そして友情、信頼の深まってゆく様を描いたものが本作であるわけです。
作者には申し訳ないですが、フランス史にまったく詳しくないため、どこまでが史実であるのかの見分けが僕にはつきません。

したがって二人のガスコン、すなわちシャルル・ダルタニャンとシラノ・ド・ベルジュラックの間に、実際にこのような友誼があったのかどうかも分かりません。
(巻末の解説に、この二人が出会ったと史実はない、というような記載を見るまで、全くの真実だと思っていました。いや、そう思いたかった。)

本作の中には、この二人のガスコンの強さ、弱さ、脆さ、男気、そういった全てがひっくるめて入っています。
だから、かっこいいんです。

佐藤賢一さん、この作品の半分以上がフィクション(あなたの想像世界)だっていうなら、あんた、マジすげえよ。


「豹頭王の行方」 栗本薫
言わずと知れたグインサーガの96巻です。
てか知らない人は全く知らないのかな..
この作品は、好きな人だけ読めばいいので、特に感想は書きません。
佳境です。

「スポーツは良い子を育てるか」 永井洋一
これは上述の村山由佳さんの作品と、問いかける内容についてかなり近いものがあります。
そして、僕がおぼろげに「こういうことだろうなあ」と思っていたことを確信に変えてくれる本でした。
探して買った甲斐があったと思います(生活人新書という新書版です)。
この確信を持って「水のように 4」にとりかかります。

これから親となる人たちには必読の本なのですが、多分世の中の大多数の親には、彼のメッセージは届かないのでしょうね。
僕にはそこに、養老氏の言うバカの壁が見えます。

作者の永井洋一さんと、平尾誠司さんとの対談を見つけましたのであわせてどうぞ。
http://www.scix.org/talk/index.html





*****


今まで読んだ本の中で特に記憶に残っているものをここで紹介したい。


村上春樹 ノルウェイの森
国境の南、太陽の西
鷺沢萌 君はこの国が好きか
ケナリも花、サクラも花
葉桜の日
F 落第生
椎名誠 銀座のカラス
犬の系譜
岳物語
山田詠美 僕は勉強ができない
アニマルロジック
辻仁成 白仏
そこに僕はいた
ミラクル
オキーフの恋人 オズワルドの追憶
江国香織 ホリーガーデン
--- ---
宮崎駿 風の谷のナウシカ
手塚治虫 ブッダ
火の鳥
ブラックジャック
安達哲 キラキラ
三浦健太郎 ベルセルク


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